2011年5月25日水曜日

何かを好きということは希望である

 

  
  展示会にて服をご覧になっていただき、皆様ありがとうございました。


  今回のコレクションの服の制作は大体2月中頃からスタートしました。前にも書いたように、その段階で

 ある程度デザインが固まっていたのでスムーズに仕事を進めることができていました。


  そして3月。


  あの地震以降、東京はそこまで不自由なく生活できましたが、人々の心は揺れ、硬くなり、

 不安や焦燥感といった闇に街全体、日本全体が覆われ、コンビニやスーパーから食べ物がなくなり、

 街は暗くなりました。いつもは満員の電車に乗ればそもそも人が少なく、笑顔もない。みんな硬い。

 明らかに暗く重苦しいものに人間全てが覆われていました。


  このような状況において、「僕の服は世の中に必要とされるのだろうか」という根源的なことを考えず

 にはいられませんでした。考えてもしょうがないのかもしれませんが。

 
もちろん、考えているだけでは答えは出ません。世の中が暗くなるのであれば、
自然、自分自身も含めた大小善悪色々なものが見えにくくなります。
ならば、暗く、闇に覆われてしまった分、
僕自身はつよく明るく表現しなければ世の中から見えなくなってしまうだろう。 
 
これまでよりもつよく明るくということを意識し、そのためにはどうしたらいいかと考え、
できることをやることにしました。 身の回りの環境も変化させていき、やたらと気の合う
新しい仲間と出会うこともできました。やれるだけやって、その先に何がみえるのだろうか。

あの3/11から展示会まで大体2ヶ月ほどありましたが、このようなかんじで世の中、
そして自分の中をおおっていた暗く、不透明なむかつく黒と対峙してきました。


 



そして、展示会。

たくさんの笑顔を見ることができました。遠くからわざわざ来てくれた方もいました。
色々な方とお話をすることができました。 よかった。とても楽しかったです。 

このような状況だからとか、世の中に暗い影が落ちている、とかではなくて、
そもそも服が好きな人は何が起ころうが服が好きなことに変わりはないのだ。

何者も、何かが好きであるという気持ちをそう簡単に変えることはできないのだ。

だから、僕は自分の服がもっと自分達の服であるよう、磨きをかけていけばいいのだ。
何かが起こり、人の心が暗い闇におおわれてしまうこともあるでしょう。
それならば、そういう人にも届くような、もっともっと素晴らしい服をつくれるようになればいいのだ。今はそのために生きろ。

黒いもやでみえにくくなってしまっただけで、その人の中にある何かを好きという気持ちは
消えることはない。存在しつづけるのだと思います。

何かを好きであるという心は、表現される人にとっても、表現する人にとっても
希望そのものなのである。

そしてみんなひとつひとつ、一歩一歩、たくさんの希望とつながっていければいいのだと思います。

ありがとうございました!!